
SOUL INK

かつて、ひとりの侍がいた。
やがてその名も、その身も土へと還ったが、
魂だけは、いまも静かに息づいている。
墨に沈む影、
滲んだ深みに、
彼の炎はなお燃え続けている。
そして今、ふたたび──
微かに墨の香が、空気を漂う。
その気配を感じた者は、
思わず背筋を正すという。
それは恐れか。敬意か。
あるいは──
まだ心の底に埋もれている
真実への静かな呼び声か。
彼は、もうここにはいない。
だが、墨はまだ語っている。
墨は、まだ覚えている。
そして紙の上で、彼らは再び立ち上がり、
静かに──今を生きる者たちへ、こう刻む。
「己に、勝て」

THE SHOGUN / Kirishima Jakuren
─ 声を捨てた将軍
かつて寂連は、稀代の軍略家として名を馳せた。
しかし、ある戦で味方の村を焼くという、致命的な誤ちを犯す。それが、すべてを変えた。
その日を境に、
彼の口は、二度と開かれることはなかった。
今や、彼は沈黙の眼差しと、
閃く刃のみで指揮を執る。
剣を抜くその瞬間、
風すらも、一瞬、息を潜めるという──。
THE SAMURAI / Kaburagi Genshin
侍:鏑木 玄真(かぶらぎ げんしん)
─ 主を救えなかった忠義の刃
主君が命を落としたその瞬間、
彼は、なお息をしていた。
忠義の象徴と讃えられたその男は、 以後、自らを恥じ、仮面の下に身を沈めた。
己の使命を果たせなかったその姿を、
もはや誰にも晒すことはできない。
それでも彼は、歩みを止めることはできない。
戦場から戦場へと彷徨いながら、
報われることなき償いを、
ただ静かに求めつづけている。


THE RONIN / Hanyū Sōgen
浪人:羽生 奏玄(はにゅう そうげん)
─ 守るべき名を捨てた、追放の末裔
血縁に裏切られ、謀反の罪を着せられた奏玄は、
その名を捨て、一族から姿を消した。
ただ一つ、消せぬものがある。
弟の刃が刻んだ、背中の傷痕。
それは痛みではなく、記憶である。
彼は今もなお、剣を研ぐ。
その刃を向ける時を、ただ静かに待ちながら。
THE ASSASSIN / Kiriko
刺客:桐子(きりこ)
─ 過去なき殺し手
人々は言う。
彼女の動きは、煙のように掴めぬものだと。
その名を知る者はいない。
ただ、ひとつの言葉だけが──
おそれと共に、ささやかれる。
桐子。


THE NINJA / Kagura no Kage
忍者 — 神楽ノ影(かぐら の かげ)
─ 主を裏切った影
幼き日より、「見えぬ者」となるよう育てられ、
神楽は、主君のために影として生きてきた。
だがある日、知ってしまった─
己がその手で、一族を滅ぼしていたことを。
その夜、彼は闇へと消えた。
残されたのは、沈黙と、ひと筋の煙だけだった。
いまや神楽は、闇より現れ、
その刃を振るう。
それは、復讐ではない。
ただ、償いのために─。
THE MONK / Myōgen
僧侶:(みょうげん)
─ 祈りへと転じた刃
かつて彼の刃が、若き者の命を奪った。 その者は、名誉のために斬られることを望んでいた。 だが彼にとって、それは“勝ち”ではなかった。 その日を境に、彼はすべての戦を捨てた。 刀を置き、名を捨て、ただひとりの僧となった。 内なる混沌を鎮めるため、彼は今も念仏を唱える。 だがその眼には、いまだ嵐が宿っている。 導きを求め、 過ちに沈み、 それでも、祈りの中に生きている。


THE OIRAN / Tsuki-gasumi
花魁:月霞(つきがすみ)
─ 月も霞も触れられぬ定め
かつて、月のように儚く、美しい―
伝説の花魁がいた。
夜が深まるほどに、その気配は薄れ、
夢のように、静かに遠のいていった。
いまもその名は、
ほのかに漂う香のように、
ひとからひとへと語り継がれている。
View on OpenSea
















